フィルムの時代まだ手振れ補正の機能もないカメラが大半を占めていた時代に、まずカメラを手に入れたら最初に身につけなければならないものとされていたのは手持ち撮影の際の「カメラの構え方」だったように思います。初めて自分のフィルムカメラを手に入れた時、カメラ好きの父親や写真部の仲間たちに最初に教わったのはこの「カメラの構え方」についてでした。表現は人それぞれでしたが「手でカメラを構えたら脇をしめてガチっと固定しなさい」というのが共通の教えだったと思います。
それから数十年の時が過ぎ、強力な手振れ補正機能を積んだデジタルカメラが主流の現在その必要性は昔に比べるとやや低くなったように感じます。
仕事のためにファッションで有名な都内の某地に通っていた時、そこには最先端かつ高級な服を扱うお店が並んでいました。早朝、おそらく雑誌掲載用の写真のために、開店時間の前の短い時間を利用して店内や店外でモデルさんとカメラマンが撮影をしている風景をそこでよく見かけました。三脚で固定しながらと手持ちでの撮影で短時間で効率よく作業を進めていく光景が目の前にあるとつい癖でカメラマンの所作を見てしまうのですが、最初は若いカメラマンほど手持ち撮影の際に昔ほど「ガチっと」プロ用のデジタルカメラを構えていないことに違和感を感じました。
しかしすぐに、強力な手振れ補正機能を積んでいる今時のカメラでは昔ほどがっちり構える必要はなくむしろ体勢が整わなくてもシャッターチャンスを優先するため手振れ補正機能に任してどんどんシャッターを切るスタイルに変化しており、今の機材を使用する上ではそれが一番合理的なのだろう、と気が付きました。
そんな訳で現在では昔に言われていたほどカメラの手持ち撮影での構え方を気にしなくても良くなってきているため、その重要性は薄れてきたと言えるのかもしれません。しかし私は別の角度から「カメラの構え方」を考えてみることをお勧めしたいと思います。と言うのは人が作品作りに選択するカメラは必ずしも最新のデジタルカメラに限るわけではないから…、です。
具体的に言えばフィルムカメラ、中でも古いカメラを気に入って作品作りの伴侶としたい場合には「ぶれ」の問題は人の側で対処しなければならないことがほとんどだと思います。フィルムカメラでも比較的新しいものはレンズを中心とした手振れ補正機能を利用することができる場合もありますが、いわゆる「クラシックカメラ」の領域に入るカメラではまずそれは期待できません。
最新のデジタルカメラを選択することもできれば、中古にはなりますが過去の(フイルム)カメラを選択することもできる現在はある意味恵まれた時代だと思います。ただし、フイルムカメラはやはり今のデジタルカメラと比べると思ったような撮影をするためにちょっとした手間やコツが必要になる場合があります。そんな手間やコツの最初の第一歩が「カメラの構え方」だと思います。それらを身につけたことでカメラ選択の自由が広がり、デジタル・フイルムにかかわらず気に入ったカメラで充実した撮影の時間を過ごすことができるならばなんて素敵なことでしょう。
具体的にはカメラの種類や機種ごとに異なるためすべてを紹介するのは難しいため、ここでは35mm版フィルム一眼レフカメラを例に(ニコンFシリーズ、キヤノンEOSシリーズなど)、手持ちでのカメラの構え方のヒントを示します。(以下の内容について実行される際にはカメラの落下等破損に十分注意し自己責任にてお願いします。)
まず左の手の平を上に向けてください。そのまま手の平を顔の前30センチ程度顎より少し下の高さに固定してください。そのままカメラの底部を転がり落ちないようにバランスに注意しながら左の手の平の上に置きます。カメラの重さのほとんどを左手に乗せるイメージです。次に右手でカメラの右サイドを包むように握り人差し指をシャッターボタンの上に軽く置きます。この段階で左ひじはある程度曲がっている状態でカメラを支えていると思いますが、その左ひじを脇腹にピタリとつけます。同時にカメラのファインダーを効き目に近づけ、ファインダーの中を無理せず覗くことができる位置に左右上下に微調整し楽に見えるようにします。
左ひじを脇腹につけることにより、手だけで支えているよりカメラのブレを減らすことができます。またファインダーを覗いているときに視界がふらふら動く割合を減らすことができます(遠くを引き寄せる望遠レンズを使用しているとより体感しやすいでしょう。)あと、これは人によると思いますが、先ほどの脇腹につけた左ひじを内側に捻り気味に若干前のほう(お腹のほう)にずらしてピタリとつけた位置で固定するとやりやすい場合があります。
ここまでの記述で勘の良い方はお気づきかと思いますが、カメラの構え方はいわゆるスポーツの基本フォームを作る際に重要視される「脇を締める」ことと共通するものがあるようです。これらのヒントを参考にご自身の体格に合わせていろいろ試していただき、最終的に一番やりやすい方法を探し出していただけると良いと思います。
(その2に続く)
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