「セッショクチケイ」と聞いてピンと来られる方はあまりいらっしゃらないのではないでしょうか。私にとっても撮影対象として意識する前はほとんど聞いたことのない言葉でした。初めてこの言葉に接した方のための「雪食地形」の説明第2回目です。
雪食地形とは
さて雪食地形とは何でしょうか?一例をあげると次の写真のような景色です。
山の稜線にあたる部分には木が生えているものの山肌の部分は一面雪で植物はほとんど生えていない…おおざっぱに言うとこのような地形です。積もった雪が絶え間なく滑り落ちて山肌を削るので木が生えることができないためこのような景観になるようです。ただし雪が降る地域ならばどこでも見られるものではく雪国の中でもとくに激しい降雪に見舞われる地域、豪雪地帯でなければ見られません。
只見町は標高はそう高くないもののとにかく冬の積雪が半端ではありません。当地で聞いた話では例年町場の積雪量は5メートルくらい山の中では13メートルにも達するのが普通で当たり前という土地です。人が住んでいる範囲内の他の雪国と呼ばれる地域とはけた違いに雪の量やその影響が大きいと言えます。その豪雪がなぜもたらされるかというと冬期、日本海側から吹き付ける雪雲が最初にあたる山脈のふもとに只見町があるから、ということになるのでしょう。海を渡って来た水蒸気を多量に含んだ雲が最初に雪を降らせる地域となるので他の雪国とは比べられないくらいの雪が降る、まさに豪雪の地となるわけです。
その雪が山肌に降り積もればやがて降り積もった雪は重みに耐えかねて山肌を滑り落ちます。その滑り落ちる雪の重さは想像を超える重さのため山肌に生えている植物を根こそぎ削り取るばかりでなく山の岩肌そのものもそぎ落としてしまいます。気の遠くなるような長い年月の間繰り返されてきたこのメカニズムにより、山肌に木が生えることができないだけでなく固い岩のみが残り山は険しい地形へと変化していったのでしょう。
雪食地形については「只見町ブナセンター」が正確な説明をしてくださっているので引用いたします。
(前略)豪雪と雪崩によって山腹斜面が浸食され形成された地形は、雪食地形と呼ばれ、只見の山地地形を特徴づけるものである。その主な形成過程は、日本海から季節風によってもたらされた湿った空気が脊梁山脈にあたり大量の雪を降らせ、山地に降り積もった雪が雪崩などで斜面移動する際に山腹斜面を削り取ることによる。只見地域では雪崩を表層雪崩(「えい(あい)」)と全層雪崩(「なで」)に分け、互いに区別している。雪食地形を生み出す雪崩は、もちろん全層雪崩(なで)である。只見地域で見られる雪食地形はグライド地形と雪崩地形に類型化され、雪崩地形はさらにアバランチ・シュートと筋状地形に細分類される。(後略)
<引用>「只見ユネスコエコパークの自然と暮らし」.鈴木和次郎ほか.只見町ブナセンター.2016年3月発行
私が最初にこの景色に出会ったとき「1,000メートル級の山の中になぜ3,000メートル級の高山帯の岩山の景色があるのか」と疑問に思った答えはどうやらそのメカニズムの中にあったようです。
(つづく)
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