雪食地形について(1)

「セッショクチケイ」と聞いてピンと来られる方はあまりいらっしゃらないのではないでしょうか。私にとっても撮影対象として意識する前はほとんど聞いたことのない言葉でした。初めてこの言葉に接した方のために少し「雪食地形」について触れます。

こと始め

思い起こせばもうだいぶ前のことになります。撮影ためだったのか、あるいは何かの用事だったのか新潟方面にクルマで行く機会がありました。帰り道、いつもだったら関越自動車道回りで帰るところでしたが、ふと地図を見ると山の中を通って関東地方に通り抜けるルートがあることに気が付きました。

時間があるのと手持ちの旅行資金が乏しくなってきた(笑)のと、もともと山道を運転するのが苦ではないので半分冒険気分でそちらのルートを通ることにしました。

あいにく天気は雨模様で、雲の中の標高がそう高くない割には厳しい山道を延々と走って行きました。ほとんど景色は見えず霧の中のドライブに飽き始めたころ、峠らしきところでふっと雲の切れ間ができました。その瞬間に周りの景色が見え、驚きました。

少年期しばしば父に登山に連れて行ってもらい、大学時代は山のサークルに入っていた関係で北アルプスや南アルプスといった山々を縦走する機会がかつて何度かありました。特にアルプスの岩、森林限界、高山植物そして残雪に代表される高山帯の景色については今まで見たこともない景色だったこともあり強く魅了されました。

さて話を戻しますと、その時雲の間からはその高山帯の地形とそっくりなごつごつとした岩と辛うじて筋状に生えている木や草を中心とした景色が見えていたのです。1,000メートル級の山の中になぜ3,000メートル級の高山帯ような岩山の景色が急に現れたのか、軽く混乱しつつも路側帯にクルマを止めて、霧が再び視界を閉ざしてしまうまでの間、その景色を眺めていたことが「雪食地形」を意識するきっかけになりました。

自宅に帰り着いてから、通ってきたルートを調べてみたらあの景色を見た地域はどうやら奥会津の只見町のエリアだということがわかりました。同時に只見町の特色の一つとして「雪食地形」というキーワードを知ることになりました。

この体験をきっかけとして「あの景色を撮りたい」という思いが膨らみはじめ、やがて只見町へ撮影に通うことになっていったのでした。

(つづく)

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写真士Takiguchi Takumi
商業的立ち位置(禄の一部)も抱えつつ、これからもいつまでも写真の世界で自由にさすらい成長していく思いを「士」の一字に込めて「写真士」と名乗っています。実は音楽(クラシックピアノ)の試行錯誤も同じくらい年数が経っています。どちらもこの先ゴールは...見えるのかな?